ひとり旅日記 ギリシャ

女ひとり旅日記 ミケーネ遺跡 見学を終えて ギリシャの旅138

見学を終えて

アトレウスの宝庫見学を終え、遺跡見学は無事、終了。バスターミナルへの坂道を上る途中に、美しい草むらに降りれる場所があったので、ちょっと寄り道をしてみた(冒頭写真をご覧ください)。

黄色い枯草の真ん中をつらぬく小道の先には、ミケーネの城塞。その向こうには、険しい山がそびえている。奥行きのある景色に、黄色、緑、茶、アイボリー…の色彩が美しく踊っている。すばらしい景色だ。

(冒頭写真の拡大↓) 山と同化して見にくいが、中央真ん中あたりに、石積が見える。

ミケーネ遺跡

 

車道に戻り、再び歩き始めると、道路わきにも小さな遺跡が見えた。

ミケーネ 車道横の遺跡

 

トゥキュディデスいわく

ところで、ミケーネ遺跡を見学してみると、思っていたよりも小さい?!、とか、クレタ島のクノッソス宮殿の方が立派だ、と感想を持つ人もいるだろう。わたしも、もっと大きな宮殿を想像していた一人だ。

しかしながら、「戦史」の著者であり、紀元前5世紀の歴史家:トゥキュディデスは次のように述べている。

アガメムノンは誰よりも多数の船を率い、アルカディア人にも船を提供した。多数の島々とアルゴス全土の王であった旨、ホメロスは言っている。ミュケナイ(ミケーネ)が小規模で、当時の城砦が取るに足らないように見えても、詩人が歌い、伝説が主張するほどの大軍勢がありえなかった、と疑問視することは、必ずしも、正確に理解するものとは言い難い。

トゥキュディデスは、そう思う理由を、ラケダイモン(スパルタ)とアテネの都市を例に挙げて、次のように説明している。

もし、仮に、ラケダイモン人の城市が荒廃に帰し、神殿と建造物の礎石だけが残ったとすれば、ラケダイモン人の名声について、幾世代も後の人々は、深い疑念を抱くに違いない。

本の解説によると、ラケダイモン人は、ペロポネソス半島の2/5を領有し、残りのペロポネソス全土と、その外側にも散在する同盟諸国を指揮する立場にあったが、彼らは、華美な神殿や建造物を持たず、都市的集住をせず、村落単位の分住を続けていたため、城市が荒廃し礎石だけが残ったとすれば、実際の力と比べ、後世の人々に貧弱な印象を与えてしまうに違いない、ということらしい。

アテナイ(アテネ)が同じ惨害を被ったとすれば、後世の人は、その都市の華麗な外観を見て、アテナイの実力を、事実の2倍にも誇大視することであろう。

 

バスターミナルにて

バスターミナルには、すでにバスを待つ人々がたくさん待機していた。

それにしても…

暑い!!

わたしは、たまらず、屋台でアイスクリームを買い、日陰のベンチに腰掛け食べ始めた。

しばらくして、何やら小さな「どよめき」が起きた。見てみると、白人の女の子が持参したリンゴに、どこからか大きな蜂が飛んできて、追い払うのに、ちょっとした騒ぎが起きていたのだった。

わたしは、この広大な大地の中から、食べ物の匂いをかぎ分け、よく迅速に飛んでくるものだと、虫の察知能力に感心した。ギリシャの過酷な夏は、虫も生き残るのに大変なのだろう。

写真:ミケーネの美しい緑

ミケーネ周辺の景色

 

ミケーネ周辺の景色

 

緑に癒されるも、暑さで思考力はゼロ!

涼しくなること、暑さから逃れることしか、もはや、頭になかった(笑)。

帰りのバスで

それから、しばらくして、待ちに待った帰りのバスがやって来た。

あぁ、エアコンが効いてる~! 

助かった~!

思考力を奪われるほどの暑さから、こうしてわたしはレスキューされ、ミケーネの山々を後にした。

その後も、いくつか山を抜け、いくつか町を通り過ぎ、だいぶナフプリオンに近づいたと思われる頃、窓の外に、岩がむき出しの、とても風変わりな人工物が見えてきた。

ティリンス遺跡(一部分)

 

往きにも見た岩の塊で、一体、何の廃墟なのだろうと思うも、廃墟と言うには、どこか風格漂う、堂々たる雰囲気があった。あれこれ思ううちに、もしかして、これが、ティリンス遺跡なのかな!? きっと、そうに違いない!と確信した。

石積をしげしげと眺めているうちに、バスは停まり、なんと、ナフプリオンのバスステーションで一緒だったCさんが、バスを降りて行くのが見えた。帰りもCさんと同じバスだったのだ。

バスの通路を歩いて降車口に向かうCさんは、すでにギリシャの強力な太陽により、白い肌が赤銅色に焼けていた。しかし、Cさんは、肌が赤く変色しているのにも構わず、再び、熱射地獄の中に降り立ち、ミケーネに続けて、さらに遺跡見学を強行するというのだった。

ひぇ~! 

わたしだったら、熱中症まっしぐら…だろう。

一見、穏やかで物静かそうなCさんであったが、この灼熱の太陽光線に少しもひるまぬ彼のタフさに、わたしは驚愕するばかりだった。

つづく

冒頭写真:草原から見たミケーネ遺跡(遠景)

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