遺跡行きバス停へ
翌朝、ギリギリまで寝ていたわたしは、バス出発時刻の5~10分前に、何とかホテルを飛び出し、バス停へと向かった。
この場所は、違う行き先のバス停もあり、いつも人々でごった返している。その朝も、歩道をはみ出して、バス待ちの人々の顔・顔・顔がごちゃごちゃ並んでいた。
時間が迫る中、わたしは焦ってバス停を探そうとしたが…
ハッ! その前に、切符を買わなくては!
危ういところでわたしは、事前に切符を買わなければならないことを思い出し、すぐ近くのペリープテロ(キオスク)のお兄さんに声をかけた。
カリメーラ(おはようございます)
ボロナ・アゴラソ・エナ・イシティーリオ・ヤーティン・アルヘア・コリンソス?
(古代コリントスまでの切符買えますか?)
すると、お兄さんは英語で「(バスの切符の販売は)ここじゃないよ」と言った。「ほら、あそこのピンクのTシャツ来てる人、見える? あの人に聞いてごらん」とのことだった。
わたしはお兄さんにお礼を言うと、急いで、ピンクのTシャツを着ているおじさんに声をかけた。すると、彼はわたしを見たとたん「遺跡行きバスのチケットだね?」とわかってくれ、すぐにチケットを買うことができた。
ホッ!
彼にはバス停も教えてもらった。そして、待つこと数分、すぐにバスが来て、無事、出発となった。
遺跡に到着!
バスに乗車するも、わたしの他に乗っていたのは、どう見ても地元住民で、たった2人か3人の客を乗せたガラ空きのバスだった。
遺跡は、コリントス市中央から離れた郊外の、高い場所にあるらしく、道はだんだんと上り坂になり、バスは狭い住宅地へと入って行った。そう、団地の中をバスは走ったのだ。
しばらくすると、わたしは団地のどこか一角に降ろされた。バスの運転手さんは「あっちだよ」と言うように指をさし、そのまま走り去って行った。
わたしは一人、ポツンとその場所に取り残されてしまい、辺りにはバス停もなく、帰りはどこからバスに乗ればいいのだろう?と、一瞬、不安になるも…とりあえず、バスの運転手さんが指さした方向へ歩いてみることにした。すると…
うわ!
急に目の前が開けたと思うと、遺跡群が目に飛び込んできたのだった‼ それは、心の準備をする間もないほどであった。
アクロ・コリントス山
住宅地の中から、突然現れたコリントス遺跡にもびっくりしたが、もう一つ、目を奪われたのが、コリントスのランドマークであるアクロ・コリントス山であった。
頂上には、女神アフロディーテの神殿があったそうだが、時代の流れと共にキリスト教教会、さらにモスクへと改築されたそうだ。
また、コリントス地峡を見渡せる位置にあり、防衛が容易な地形であることから、アクロ・コリントス山は、東ローマ帝国時代に要塞化されて以降、さまざまに所有者も変わる中、その重要な役割を果たしてきたそうである。
デジカメを目一杯、ズームさせてみると、頂上に要塞跡がわずかに見えた。
わたしは、アクロ・コリントス山を見上げながら、こう思わずにはいられなかった。「明日、この山のアフロディーテ神殿を見学する予定だけど…この険しい岩だらけの急斜面、どうやって登るのだろう?!」
わたしのガイドブックには、頂上までの行き方は書いていなかったので、一般人によるネット投稿の情報(英文)だけが頼りだった。
それによると「コリントス遺跡の入口からもう少し行ったところで公共バス(Ktel)を降り、そこから20~30分歩く」そうである…。バスを降りる場所は、あらかじめ運転手さんに頼んでおけば何とかなりそうだが、果たして頂上までたどり着けるのか、半信半疑のわたしであった(笑)。
おまけ:遺跡の犬?!
遺跡の駐車場を通り過ぎ、チケットを買って入場。驚くことに、遺跡内には2匹の野犬がいた。遺跡内を自由に走る。係員は何もしない。
フンをしたら、どうするのだろう? (ひぇ~)
…が、まあ、今のところ、ギリシャの野犬は人には向かってこない。みんな、穏やかだ(ということは、ここでも誰かがエサをやっているのだろうか?)
とにかく、犬は、トコトコどこかへ行ってしまった。そんな姿を見て、人間は、ロープが張られ、立ち入り制限されて、自由がないなぁ~なんて思ってしまう。
犬は遺跡の中を自由に歩き回り、どこかお気に入りの場所でのんびりしているのだろう。
下写真:グラウケの泉周辺で寝そべる犬
冒頭写真:アクロ・コリントス山