ひとり旅日記 ギリシャ

女ひとり旅日記 テサロニキ 恋しさは募る ギリシャの旅58

我に返る

最初のカルチャーショックを引きずってはいたものの、しばらくテサロニキの町中をバスで走るうちに、「これは、今まで以上にしっかりと場所、方向、位置をつかんでおかないとエライことになる!」と、ようやく島との違いを冷静に考えられるようになってきていた。林立する建物の高さ、街の複雑さ、いくつもの車線、車の数、そして人々の忙しさ・・・すべてがテサロニキという都市を物語っており、あらためてエーゲ海の島とは全く違うことを痛感させられたのだった。

バス停「IKA」

そうこうするうちに、観光客たちがまとまって降りたバス停があった。わたしも一緒につられてバスを降りそうになったが、グッとこらえた。車内の案内によると、目的のバス停「IKA」はその次であったからだ。バスを降りた観光客らを横目に、わたしは・・・

ここで降りた方が良かったのかな・・・?

と、少し不安になる。

そして、バス停「IKA」。思った通り、何ともさびれた場所にあった。

うわっ、どうしよう!

バスを降りたのは、わたし一人だった。そして、周りには誰もいない。バスが走り去ると、わたしは完全に、ポツンと一人きりになった。方向も全くわからない。

こんな時は、下手に歩きまわらず、すぐに周りの地元民に道を尋ねるべきだ。

わたしは、幸い、自転車の男性が信号待ちをしているのを見つけた。彼は、ディモクラティアス広場への行き方を教えてくれただけでなく、親切にも、道の途中までついてきて教えてくれたのであった。そして、別れ際に・・・

・・・しかし、ディモクラティアス広場への行き方なんて、めったに、きかれないけどな・・・?

と、わたしに疑問を投げてきた。彼は、「ディモクラティアス広場に、一体、何の用があるのだろう」といぶかしく思いながらも、道案内をしてくれたようだった。「予約したホテルが広場に近いのだ」と答えると、彼は納得してくれた。わたしは、丁寧にお礼を述べたけれど、再度、信号が青から赤に変わってしまい、信号待ちの彼の後ろ姿に、申し訳ない気持ちになった。

ディモクラティアス広場へ

自転車の男性のおかげで、方角が定まり、自分の立ち位置がようやくわかった。ガイドブックの地図によると、裁判所近くの「10月26日通り」付近にいるようだった。この通りを、裁判所を右手に見ながらまっすぐ歩いていくと、ディモクラティアス広場へ行くことができる。

日が傾き、ビルディングの長い影に覆われた「10月26日通り」は、ガラーンとしていた。昼間ならば、街を行き交う人々の姿があったのかもしれない。

通りをぬけると、大きな交差点に突き当たる。その向こう側に見えるのが、ディモクラティアス広場だが、工事中のようであった。しかし、それよりも、交差点の中を排気ガスをまき散らしながら走りゆく、大型バスやトラック、車の数がはんぱないことに、仰天した。一瞬のうちに、のどが痛くなり、とんでもない所に来てしまったと思った。自転車の男性が、「ディモクラティアス広場への行き方なんて、普通、誰もきかない」と言っていたのも、うなづける。わたしは、島ののどかさと、澄んだ空気がたまらなく恋しくなってきたのだった。

つづく

冒頭写真:テサロニキ市内の様子

おすすめ記事