ひとり旅日記 ギリシャ

女ひとり旅日記 メテオラ カランバカへ帰還 ギリシャの旅104

◆メテオラの地図(日本語は加筆しています)

メテオラ地図

 

アテネから来たMさん

ドイツ人夫妻を見送った後、アギオス・ステファノス修道院前の広場で、新たに道連れ(?)となったのは、マレーシア出身の青年(以下、彼をMさんと呼ぶ)だった。Mさんは、その日、アテネからメテオラに電車で来たのだが、また、すぐに、アテネへとんぼ返りする、とのことだった。わたしは驚いて…

このあと、すぐ?!

と尋ねると、Mさんは「イエス」と言った。

ずいぶんタイトなスケジュールだね…

と言うと、彼はうなづき、これまでの経緯を話し始めた。

「今日、アテネでストライキが起こったんだ。全てがストップしてしまい、アテネでは何もできなくなったから、急遽、メテオラに行ってみよう!と思いついたんだ。時間がないから、ハイヤーを雇ってきたんだけど…。そしたら、100ユーロもしてさ~、ボク、失敗しちゃったかな~」

Mさんは、最後の方、声が小さくなって、うつむいてしまった。

そっかー、ずいぶん、高かったね…

と、わたしが言うと、「メテオラのマップに、修道院めぐりのツアー広告が出ててさ、あれ、安いよね~」と、Mさんはしょんぼりした。(確かに、Mさんの言う通りかもしれないが、しかし、日帰り旅行者向けの弾丸ツアーが存在するのかは、わからなかった)

しばらくして、Mさんは顔を上げると、「ねえ、この道を、全部歩いたの?」と、わたしに尋ねてきた。

うん! 超きつかったけど(笑)

歩く価値は、十二分にあったよ!!

と、100%の自信をもって答えると、みるみる自分の胸が幸せな気持ちでいっぱいになってきて、ニコニコ笑いが止まらなくなってきた。それを見たMさんも、大きくうなづいて…

今度来たときは、ボク、絶対歩くんだ!!

と、メテオラの絶景を見ながら、目をキラキラさせて笑った。

逆転(スラマパギが言いたかった!)

その後、Mさんが出発するまで、おしゃべりをして過ごしたのだが、突然、わたしは、昔、マレーシアに家族が短期出張していたことを思い出した。Mさんに話すと、Mさんは「本当~?!」と、笑った。わたしは「本当だよ!」と、家族から耳にタコができるくらい聞かされたマレーシア語を、この時とばかりに、早速、Mさんの前で披露しようとしたが、なんと、肝心な時に、頭は真っ白! 「知ってるよ」と言いながら、口をパクパクさせるだけで…もう、本当に恥ずかしかったが、優しいMさんは「●●●?」「▲▲▲?」と、いくつかマレーシア語を言ってくれもしたが、どれも当てはまらなかった。心底、自分にガッカリしたわたしは、忘れてしまったことを謝ると「いいよ、いいよ」と、ハイヤー代で落ち込んでいたMさんに、なぜか、逆に慰められる、という奇妙な展開となったのだった(涙)。

カランバカへ

そうこうするうちに、Mさんの出発となった。黒いワゴンで去っていくMさんを見送ったあと、わたしは一人、誰もいなくなった石に腰掛けた。心地良い疲れに身を任せ、ボーっとしていると、ほどなくしてバスが来た。すると…

(キミが乗るのは)あのバスだぞー!

移動販売車のお兄さんが叫んだ。

ありがとーう!

わたしも叫ぶ。なんて親切なんだろう!(笑)

バスはターミナルに早めに来た。運転手は、一旦、バスから降りると、どこかへ消えてしまったが、しばらくして、10分かそこらで戻ってきた。出発である。

わたしは、移動販売車にかけよると、お兄さんに、いろいろお世話になったお礼を述べた。そして、置いていかれないよう、あわててバスに乗った。

ハプニング

わたしが乗車したタイミングで、バスは発車した…と思ったが!! 運転手さんは、一旦、動き出したバスを道のはじに止めた。

(どうしたのだろう?)

と、運転手さんを見ると「しまったー!」と苦笑いをして、腕時計を見ている。どうやら、まだ発車時刻になっていなかったようで、バスは少しフライングして動き出したようだった。わたしは、思わず、運転手さんと一緒に笑ってしまった。運転手さんは、ターミナル広場に乗客が取り残されていないか確認してから、改めてバスを発車させた。

小さな奇跡

実は、この時、ちょっとした奇跡が起きた。バスの座席に座ろうとしたところ、わたしが欲しくてたまらなかった、メテオラの奇岩が立体的に堂々と描かれた、新聞紙1ページくらいの大きいカラー地図が、まるで「どうぞ!」と言うように、置かれていたのである。誰かが置き忘れたのだろうが、おそらく、折りたたまれたまま、一度も使われていないだろう新品の地図だった。

(わー、ラッキー!!)

メテオラ巡りの記念として、ささやかながらも、すばらしいお土産となったのだった。(上方の地図です)

バスの車窓から

バスの車窓から見るメテオラの景色は、視点が高くなるからか、いっそう迫力があるように思えた。その様子をさっそく写真に撮ろうとしたが、動いているのと揺れるのとで、うまくいかなかった。写真はあきらめ、肉眼でのウォッチングに専念することにした。それにしても…

なんてバスは早いのだろう!

日中かけて歩いた道のりを、バスは瞬時にかけぬける。走馬灯のように景色は流れ去り、いろいろな事を思い出しては、胸の奥がキュンとした。途中、バスは1、2度停まって人を乗せたけれども、なんと、それは、たった10分かそこらの出来事だったのである。

つづく

冒頭写真:バスの車窓から見たメテオラの奇岩

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