デロス島へ出発
ミコノス島二日目はデロス島の日帰り遺跡観光だ。前日に船のチケットを買っておいた。朝10時出発である。
出発前に、奥様の許しを得て洗濯物を干してきた。帰ってきたら完全に乾いていることだろう。
すでにミコノスタウンの小さな船乗り場にはデロス島行きの船が停泊している。船に乗り屋上デッキの見晴らしのよい席に座った。しかし・・・
あれ、なんだか寒い?!
昨日とは空気が違う・・・?いいや、まだ朝だから肌寒いのだろう。これから太陽がのぼってくれば暑くてたまらなくなる、今に太陽が顔を出したら・・・わたしはそう思っていた。昨日が海水浴日和の真夏日だったからだ。
そうこうするうちに船はミコノスタウンを出港した。わたしは階下に降り、昨日買った絵はがきを船内で書こうと思い立った。カプチーノを注文。
絵はがきを書き上げ船内を歩行中に激しい波の衝撃で船は大きく揺れた。転びそうになり、手近なものにつかまるも、手首が少し痛くなった。このように予期せぬ衝撃はある、特に規模の小さい船の場合には。以後、わたしは船の中は用心深く歩くようになった。特に小さい船の場合は用事がない限り、なるべく着席して立ち歩かないように心掛けた。
デロス島到着
デロス島に着いた。上陸してすぐの入場口は混雑する。船が着いたタイミングで観光客が一度に小さな窓口に押し寄せるからだ。対応が追いつかない。船にはこんなに人が乗っていたんだと改めて思う。
なかなか進まない行列・・・と、雨が降ってきた!
うそ?!
傘もパーカーもホテルに置いてきてしまった・・・ウソでしょ・・・心の中で叫ぶ。行列は進まず遺跡のチケット売り場の屋根すら遠い・・・雨にぬれるしかなかった。
チケットを買い、意を決して雨の中足を踏み出す。とりあえず博物館を目指した。入場すれば博物館は一目でわかる。目立つのだ。雨から避難できホッとする。
さあ、ギリシャに来て初めての博物館見学だ。
デロス島博物館
彫刻、フレスコ画、モザイク画、石像などの展示がある。
美しいモザイク画の一部。花と鳥の題材も良いし、グラデーションの色使いもすばらしい。バックの暗褐色の部分を単色にせず、いくつかの色の石をあえて混ぜ合わせているところも細かい。
当時の酒のつまみだろうか?どのような調理法だったのだろう。
博物館をゆっくり見てまわった。1時間以上は経ったと思うが雨は止まず。用意周到な人たちは傘やビニールの合羽で雨をしのいでいる。
昨日は真夏、今日は冬?! エーゲ海の厳しさ
猫も屋根の下で雨宿りをしている。博物館から隣のカフェへ移動し、温かいカプチーノを注文し立って飲む。小さなカフェに人数分の椅子はない。雨と寒さをしのぐため人が集まってくる。店内のみやげ物を見たり、立ち話をしたり、入り口の猫と遊んだり・・・みんな思い思いのやり方で時間をつぶす。
雨はいっそう激しく土砂降りとなってきた。
カフェに韓国人のグループが到着しにぎやかになる。リーダーがてきぱきと人数分のランチを注文し、カプチーノとお昼のパンが次々と運ばれていった。
時々雨脚は弱くなるも、すぐに元に戻る。
寒くて寒くて凍えそうだった。いまや遺跡見学うんぬんよりも、まずは寒さと戦い寒さをなんとか克服することがわたしの優先事項となった。
かなりの時間を立ち往生した。時間がほぼなくなってきた頃、雨が弱くなってきた。
今だ!
カフェを出て少しでも遺跡を見ようと歩きだした。と、このタイミングで徐々に天気が持ち直してきたのである。
あっ!
同時にある考えがひらめいた。自分が乗ってきた船はもうすぐ出港してしまうが、その次の最終便で帰ることにしてはどうか?念のため、遺跡入り口の事務所に尋ねるとそれで良いと返事がもらえた。
やった!
さあ、ここから遺跡見学開始だ。汽笛を何度も鳴らした後、わずかな見学者を残し船は出港していった。
デロス島遺跡見学
地図を見る。あまりにも広すぎる遺跡なので効率よく周らねばならない。いつの間にか雨はやみ、あたたかい水たまりの遺跡の中を歩く。
2000年以上前の古代の小道。かつてデロス島民が歩いた小道だ。
円柱とモザイク画が当時の繁栄ぶりをしのばせるお屋敷跡。
有名なライオン像の前には遺跡の係員さんがいた。写真を何枚か撮ってくれ、像のモデルになった小型ライオンは絶滅した種であることを教えてくれた。
あちこちに野花が咲き、遺跡に色どりを添えている。
あの雨が育てていたんだ~♪(笑)
そして崖の上の神殿を目指して道を登る。
かなり登って神殿に着くも、さらに向かい側の崖にも別の神殿が見える。聖域ゾーンだ。
辺りを見渡すとはるか上方の急な崖のてっぺんで何か小さなものが動いている。人だ。柵も手すりもない崖。階段らしきものが遠目で見えたが、チャレンジする気はない。下から見ても目がまわるような高い高い崖を指先くらいの人影がやっと見えるレベルだ。そこからならデロス島全景だけでなく、周囲の島も一望できるのだろう。彼らのチャレンジ精神に心から敬意を表明したい。
崖のてっぺんには登らなかったものの、遺跡を歩きつくしたわたしは、なんとか入場口まで戻ると日影のベンチにドカッと腰を下ろした。すでに気温は上がり日なたは暑いのだ。ふと周りを見ると他の人たちも同じように建物の日影にドカッと腰を下ろしていた。
無理もない。5時間近く立ち・歩き続けたのだから。
自分、よくやった!
考えれば恵まれていた。真夏日のデロス島遺跡巡りはかなり大変だろうと想像できる。エーゲ海の洗礼は厳しかったが、後に天気が回復したおかげで満足のいく観光ができたのだ。
デロス島の魔法はとける
船は汽笛を鳴らしデロス島を後にした。ミコノス島に着き、船を降りようとしたとき手元のチケットを見て「おや?」と思った。なぜ船のチケットが一組残っているのだろう?デロス島の魔法から覚めたわたしは現実に戻った。
船員に尋ねてみるとそれはプレゼントだと言う。意味が分からない。もしかして二人分のチケットを買わされたのか?さらに尋ねようとすると、横から「わたし、日本語すこしわかります。」と言われ「えっ?」と振り向くと東南アジア系の青年が立っていた。不意の日本語にわたしは言葉が出なかった。
彼によると船のチケットは最低二人分からしか買えないのだと言う。彼もひとり旅だったが二人分のチケット購入となり、余った分は他の人にあげたと言っていた。そういえば、チケットを買う時に「高いな・・・」とチラッと感じたのを思い出したが、まさか・・・である。今の今まで気づかなかったのもエーゲ海の魔法にかかっていたからだろうか?
再びミコノス島
彼にお礼を言い少し話をしたあと、リトルヴェニスに向かった。まだミコノスタウンのこの付近は散策していなかった。ちょうど良い、お昼にしようと思う。
途中、真っ白な教会が見えてきた。パラポルティアニ教会だ。真夏の抜けるような青空の下この教会の真っ白なコントラストが美しい写真を見たことがある。
レストランを通り過ぎ海沿いの狭い小道をぬけると遠くに6つの風車が見える。
適当に道を曲がりレストランを何軒か見て席に着く。ゆっくり落ち着いて食事ができるのが嬉しい。(入ったのはイタリアンでした)
エネルギー補給後、いったんホテルに戻った。中庭の洗濯物を取り込もうと思ったが、なんと奥様が「雨が降ったでしょ(笑)」と洗濯物を取り込んで下さったのだ!!感謝!!
デロス島の簡単な歴史はこちらです。
デロス島への出港時間や船のチケット、博物館の写真撮影のルールなどは現地にて最新情報を確認してください。