ひとり旅日記 ギリシャ

女ひとり旅日記 テサロニキ ヴェルギナ日帰り旅4 ギリシャ旅65

ギリシャ人女性Yさん

考古学博物館の見学が終わり、外に出ると、まぶしい日の光に目を射られた。薄暗い闇から、突然、太陽の光にさらされ、目をしばたたかせずにはいられない。

ヴェルギナの博物館

 

周りは柔らかな春の緑に覆われており、一見、ここはちょっとした公園のようにも見える。考古学博物館の外観が緑の小丘などとは、ふつう、誰も思わないだろう。芝生に覆われた敷地内を歩き出した時・・・

〇〇〇~!!

と、私を呼ぶ声が聞こえた。見ると・・・

敷地内にある屋外カフェに、館内ではぐれてしまった、ギリシャ人女性Yさんが座っていた。

ちょっと疲れちゃってさ~

わたしの顔を見ると、彼女はそう言って笑った。そして、親切にも「お茶飲む?」と声をかけてくれたのだったが、わたしは「敷地内を歩き回りたい」という衝動を、どうしても抑えることができなかった。エーゲ海の、灼熱の島旅を終えたばかりのわたしには、この、目の前に広がった、みずみずしく、さわやかな新緑の魅力に抗うことが、とても難しかったのである。

博物館の外観と周辺

ヴェルギナの博物館

 

小丘(考古学博物館)は緑の草で覆われ、なだらかなカーブを描いている。きれいな半円なので、外から見ても、人工の丘とわかる。

若葉の美しさに、わたしの心は浮き立ち、たくさんの写真を撮った。

ヴェルギナの博物館 庭

 

実のなっている樹木もあった。

ヴェルギナの博物館 庭の木

 

見た瞬間、「これは桑の実では?」と思い、小学生の頃、帰り道に食べた甘い実の記憶がよみがえってきた。わたしは、この実が食べられることを、一緒に帰っていた友だちから教わった。そして、その友だちは、おばあちゃんから教えてもらったんだと言っていた。紫色の濃いものは熟しているだろうから、食べたらさぞ美味しいだろうと思ったが、そもそも、ギリシャに桑の木があるのだろうか、という疑問がどんどん膨らんできて、口にするのは控えてしまったのだった。(しかし、今、ネット上で調べてみると、やはりこの木は桑だったのでは、と思う。ウィキペディアによると、ギリシャ神話の中にも桑の木(実)は出てくるそうだ)

みずみずしい緑の庭をもっと満喫したいと、小道の奥へと歩いていくと、遠くに小さな建物が見えてきた。人が出入りしていたので、なんだろうと近づくと、それはミュージアム・ショップだった。

館内の写真撮影は禁止だったため、何か手頃な絵はがきでもあれば、旅の良い思い出になる。思った通り、絵はがきは店頭に並べられていた。「ヴェルギナの太陽」が模様付けられた、フィリッポス2世の黄金の納骨箱の絵はがきと、どんぐりの実がかわいらしい、黄金のリースの絵はがきを購入することにした。そこで、わたしは、ちょっとしたサプライズを思いつき、どんぐりのリースは2枚購入した。

ギリシャ人女性Yさん 2

ヴェルギナの博物館 庭の木

 

Yさんの元に戻り、今度はわたしも一緒にお茶をしつつ、いろいろなことを話した。彼女はスマートフォンを持っていた。妹さんとの電話が終わった後、写真を見せてくれた。わたしは、なんて便利なものだろうと思った。次々と色鮮やかな、美しい写真が現れては消え、現れては消え、さらにそれは、指先一つで自由に伸び縮みさえした。(当時、わたしが所有していたのはガラケーだった)

しばらく休んだあと、そろそろバスの時間ということで、バス停へ移動することになった。出口を出て左折し、道なりに歩いてみたが、バス停らしきものはどこにも見当たらなかった。日本人ならば、ここで驚きあわてる場面であろうが、そういったことの免疫は、すでに島の旅行で得ていたので、べつだん、驚きはしなかった。そして・・・

あー、誰かに尋ね・・・

と、わたしが思った時には、すでにYさんが間髪入れず、レストランのウェイターが、店の奥から道路に近い屋外席まで偶然歩いてきたのをとらえ、バス停の位置をききだしてくれていた。少し離れた場所にあるレストランだったため、声を張り上げる必要があったが、彼女は難なくそれをこなした。

瞬時のことで、わたしは、彼女の鮮やかな対応に舌を巻いた。そして、こんな頼もしい彼女と道連れになれて、本当にラッキーだと思った。

彼女は、身振りで「じゃあ、ここに座って待とうか」と地面から少し高くなった石段を示し、わたしたちは並んで腰を下ろし、バスを待った。

つづく

冒頭写真:考古学博物館の外観と庭木

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