ミコノス島 出発の朝
ミコノス島(ニューポート)9:50発ーサントリーニ島11:55着の高速船に乗ることになっている。チケットはすでに日本でオンライン購入し、ミコノス島初日に船会社の代理店で受取済みである。なので、あとはオールドポート近くのタクシー乗り場からニューポートへ向かうだけになっていた。
オールドポート手前のパン屋さん
二日間お世話になったホテルを早めにチェックアウトし、ミコノスタウンの迷路のような細い道をオールドポート目指して歩く。まだ白い町はまどろんでいるのだろう。人影はほとんどない。途中のパン屋さんで朝食を調達する。初日にも訪れていたパン屋さんで、プレーンパンからお惣菜パン・菓子パンまでそろっている。手軽で財布にも優しい。
あっ!
ケース越しに、じーっとパンを見ていたわたしはひらめいた。
ミコノス島の名物の一つに「ルカニカ」というスパイシーなソーセージがあるのだが、食べたいと思いつつも、食べることができないでいた。もしかしたら、ルカニカを使ったお惣菜パンがあるかもしれない。
これかな・・・?
刻まれたソーセージのトッピングがのったパンを指さし、「ルカニカ」であるか店員さんにきいてみた。
わたしは、このギリシャ旅で、覚えたギリシャ語をなるべく使ってみようと試みていたが、なぜか、この若い女性店員さんには大ウケであった。
「ルカニカ」と言った瞬間、「何で?!何で知ってるのー?!」と彼女は目を丸くして、大笑いした。彼女の反応も面白かったが、思いがけない形で「ルカニカ」を食べられるのが嬉しかった。
さらに、前回食べて大変気に入った、チェリージャムを練りこんだ、小さな揚げ菓子パンも数個注文した。「これすごく美味しいの、お気に入りなんだ」と言った瞬間、彼女は吹き出した。「何で?!何で(おいしいって)わかるのー?!」と腹を抱えて笑い出した。
彼女はわたしがリピーターなのを知らない!
会計をする時に、彼女がわたしの紙袋に1個余分にパンを入れていたので、あわてて「そのパンは注文していないよ」と言うと「おまけだよ!」と彼女はニッと笑った。
ニューポートへ
まだ、時間が余っていたわたしは、ミコノスタウンを目に焼きつけるべく、高台まで散策した。後ろ髪を引かれる思いだったが、次の目的地サントリーニへ心を切り替えタクシーに乗る。
ほどなくして高速船の出航港「ニューポート」へ着いたが、誰もいない。どうやらわたしが一番乗りのようだった。日差しが強く、少し離れた日影に退散した。昨日のデロス島での出来事が嘘のようだ。
ポツポツと人が集まりだし、目の前のカフェにスーツケースを引いた客が現れた。
わたしの隣にはアジア人たちの団体グループが集まってきた。ツアーのリーダーは段ボール箱を二つ抱えており、なぜか、一つはユニチャームのおむつの箱でもう一つは熊本県産(だったと思う)のレタスの箱。久しぶりに見る日本語に懐かしさを覚えた。
彼らは母国のポップスを流し、船を待つ間、歌ったりしていた。陽気な人たちである。
高速船Seajets
船はそれほど遅れずに現れた。フェリーより小型な分、スピードを出せる。船内は自由に歩き回れるが、とりあえず自分の席に着く。屋上にデッキもあったが、何となくデロス島行きの船のことを思い出し、歩き回るのは避けてしまった。
船のスクリーンでは映画の予告編などを流している。
ミコノス島で買ったパンを食べてみた。「ルカニカ」のお惣菜パンはソーセージの肉の風味と塩気がパンにマッチしていた。そしてチェリージャムの小さい揚げパンは、チェリーの甘酸っぱさと揚げパンのちょうど良い甘さの相性がバッチリで、文句なく美味しかった。
最後の、チェリージャムの揚げパンを口に頬張る。切なくなったけれど、ミコノス島の良い思い出がたくさんできて良かったなぁ、と思った。
途中、船はいくつか島に寄った。
高速船は乗船時間が短いので、ガイドブックや旅の予定表などを見ているうちに、サントリーニ島へ着いてしまった。アナウンスが流れ、はやる気持ちでリュックを背負い、出口へと向かう。
サントリーニ到着
高速船はサントリーニ島のアティニオス港に到着した。港は人と車でいっぱいだ。さすが人気の島、サントリーニである。この中からフィラ行の公共バスを探さなくてはならない。
見た目ではよくわからないので、誰かに聞こうと見回していると、「どうしたね?」と親切なおじさんが声をかけてくれ、公共バスを教えてくれた。
日本の感覚で言うと、公共バスと言うよりは観光バスに近い。りっぱで大きな車体である。バスのチケット係にフィラ行を確認し、チケットを買ってバスに乗った。
アティニオス港からフィラへ
恥ずかしい話だが、わたしはサントリーニの港に着いたら、ドンキーやロープウェーでフィラの町に行くものだと思い込んでいた。しかもロープウェーが混み合うことや、ドンキーが怖かったという話をきいていたので、階段でも町へ上がって行けるように、普段から200段の階段で足を鍛えていたのだ。
そんなことを思い出しながら、わたしは何度もヘアピンカーブで揺さぶられ、バスの車窓から、だんだん下へ遠のいていく海を眺めていた。バスは崖すれすれに何度かカーブを曲がり、サントリーニ到着早々、わたしはスリルを楽しんだ。こうして汗をかくことなく、フィラの町へ到着した。
個人旅における船旅のコツや、船のチケット手配については、こちらでまとめています。