ホテルはどこ?!
ロードス・シティのバスターミナルから、歩いて10分もかからないホテルを予約していたが、すぐそばまで来ているのに、場所がわからない。近くの宝石店で道を教えてもらい、お礼を言ってお店を出ようとすると、「ねえ、30%引きだよ、宝石買っていかない?」などと笑って、冗談を言ってくる。
ホテルは、バスターミナルの北側にあり、都会的な街並みの、ブティックなどの店舗が入る大きなビル近くにあるようだったが、全く見当たらなかった。すれ違う人、人、人に尋ねるも、「あの辺」「あっちの方」「そっちだ」という感じで、恐らく、具体的には誰も知らないようだった。
わたしは、同じところをぐるぐる周っていて、いつのまにか空は完全に暗くなり、街灯や、お店の明かりが、夜の闇にくっきりと浮かび上がるようになっていた。
何人目だったか、ブティックのお姉さんに尋ねたところ、「あ、そのホテル、このビルにあるよ、あっち側」と教えてくれた。
ええっ?!
その辺はもう何べんも歩いている・・・と思いながらも、お姉さんの指し示す方向へ歩いていくと、確かにホテル・エルメスはあった!!あったが・・・しかし、看板は表に出ていなかった!!ガラス戸に「Hotel Hermes」と小さく書いてあったのだ。
ガーン!
ホテルの看板は目立つように、道を歩いていてすぐわかるように掲げられているもの、と思い込んでいた。まさか、ガラス戸にあったとは! 完全に盲点であった。
驚いたものの、とにかくホテルが見つかってホッとした。
ホテル・エルメス
カリスペーラ!(こんばんわ!)
と挨拶すると、白髪で眼鏡をかけた優しそうなホテルの主人が出てきた。一通り説明を受け、チェックインを済ませる。
部屋に入り、荷物を置いて休もうとしたが、水の流れる音がチョロチョロ聞こえてきた。調べたところ、トイレから水音は聴こえるようだったが、水が流れているような形跡はなかった。しかし、このまま放っておくわけにはいかない。
すぐさま階下の主人に説明し、一緒にトイレの水を確認するも・・・
あ!
と思った時には、主人がトイレのレバーを押して水を流してしまった後だった。水の音を聴いて欲しかったのだが、これでは聴こえない。
「水は問題ないよ」と主人は言う。「ちがう、ちがう、そうではなくて、水を出していないのに、水音がしていたんだ」と言うも、伝わらなかった。わたしの英語がまずかったのだろう。水音が聴こえればすぐわかる、と思ったのだが・・・。
すると、「じゃあ、部屋を変えよう、こっちは何の問題もないから」とのことで、わたしは部屋を移動させてもらった。シャワー室が狭くなってしまったが、水音はしなくなった。これでゆっくり眠ることができるだろう。ひとまず安心だ。
そして、ラッキーだったのは、このホテルが朝食付きだったことだ。スーパーへ買い出しに行かなくて済む。明日への準備を整え、その夜はリンドスの事だけを思って眠りについた。