崖沿いのウォーキング
食べ過ぎたー!もう、夕食はいらないなぁ。
運動がてら歩けるところまで歩こうと崖沿いのウォーキングを再開した。
さっき顔を出した太陽はもう雲間に隠れてしまっている。左手に海を見下ろしながら歩いた。
崖沿いに美しい教会や家々が並んでいる。
途中、こんなアート作品も!
途中、上がってきた道を振り返ってみる。
ん~、ずいぶん上ったかな、いや、まだまだ!
もともと、歩くことは好きだ。知らない町を歩くのは、さらにワクワクする。かなりフィラの町は小さくなってきた。
道は上り下りを繰り返す。
途中でかわいいレストランやプチホテルを通り過ぎる。どこを切り取っても絵のような風景だ。
繊細な模様の門扉。別記事にも書いたが、美しいデザインが多い。
もう、フィラを抜けて別の町へ来ているのだろう。少し道が幅広くなり、道しるべが立っていた。
なるほど、ここからイアまで歩いて2時間45分かぁ。
イアは、フィラの崖沿いから遠く見えた、島の先端の町だ。
さらに歩き続ける。何も考えていない。
途中、パン屋さんの看板を見つけ、矢印通り内陸側に入って歩いてみたが、店は見つからなかった。道は小さな教会に突き当たる。
そろそろ休みたくなってきたなぁ。
通り過ぎたカフェを思い出した。
そうだ、あそこでお茶をしよう!
こんどは、海を右手に見ながら来た道を戻り始めた。
かなり、歩いたなぁ!
さっき、晴れていたと思うと、急に曇ってくる。荒々しい風が吹き抜けて、雲が形を変えながら飛び去っていく。
島の黒い石で縁取られた道を、下って上がる。強い風のおかげで、こんなに歩いても大して汗はかかない。吹き抜ける風に全身をさらす。
まるで、風になったようだ!
さえぎるものは何もない。
絶妙カフェ
カフェは、崖の道に面した、家の一角に設けられている。素朴で小さなカフェだ。フィラからの散歩で戻る途中、この辺で一休みしたいな・・・と、ちょうど思う場所に建っている、絶妙カフェなのだ。
行きにチラッと見た時は、数人のお客さんがいた。中でも目立っていたのは、黒人の綺麗なお姉さんで、カプチーノを飲みながらノートパソコンを広げていた。
わたしがカフェに着くころには、さらに風は強くなり、一瞬も風が止むことはなかった。風をよけるため、奥に引っ込んだ席に座ろうかとも思ったが、しかし、ここはサントリーニ、少しでも景色の良い席がいい。
とにかく強風だった。おじさんが他のテーブルに料理を運んでいた時にも、何かがトレーから飛んでいくのが見えた。ここはカフェだけでなく、料理も注文できるようだ。
海を見る。日は傾きかけていたが、まだまだ日差しは強い。
おじさんが、強風に注意しながらカプチーノを運んできた。
おっと!
小さなガラスのコップに伝票が入っている。わたしは伝票が飛ばされないように、コップを逆さまに置いた。そして、カプチーノをひとくち・・・
ふー、脱力・・・(笑)
ホッとした、心地よい疲れだ。
カプチーノの香り、そして太陽と海・・・。夢を見ているようだった。ここに、こうして・・・ギリシャのサントリーニで、お茶をしているとはね・・・。
わたしはゆっくりとカプチーノを味わった。
しばらくして、ここはサントリーニのどこだろうと思った。商業化されていない雰囲気がいい。だいぶフィラ寄りに位置するものの、フィラに属しているのかはわからない。かと言って、隣町とも言えない。中間地点なのだ。
日は傾き、体は十分に休まった。頃合いを見はからい、軽く手を挙げておじさんに勘定を依頼する。そして、町の名前を尋ねてみた。おじさんは、にっこり笑って・・・
フィ・ロ・ステ・ファ・ニ!
と分かりやすく、ゆっくり、はっきり発音してくれた。フィラの隣町だったのだ。会計の際、おじさんは「カプチーノ、うまかったか?」と楽しそうに尋ねてくる。「とってもおいしかったよ!」と、わたし。おじさんはにっこり笑ってお店の奥へと消えていった。
再びフィラへ
フィラの中心地に着くころには日はだいぶ暮れてきていた。バスターミナルへの案内板の通りに道を進む。バスターミナル横を通り、病院(白い大きな建物)で左に曲がり、大きな並木道のAgiou Athanasiou通りをしばらく直進する。ホテルに入る前に、ホテルの目の前にある食料品店でお水やヨーグルト、クラッカーなどを買おうと思った。
残念な食料品店
小さな食料品店だが、ちょっとした物ならば置いてあるだろうと思い、ガラスドアを開ける。
ヤーサス!
あいさつをする。小柄で親切そうなおばさまが対応してくださる・・・と思いきや、何か様子がおかしい。顔をそむける、視線をまったく合わさない、質問に対して無視。
わたしの声が聴きとりにくいのかと思い、大きな声でゆっくりと繰り返し質問をすると、誠意の感じられない、つっけんどんな答えが返ってきた・・・。そして顔をそむける・・・。
えっ!
まさかの、観光大国ギリシャで?!
しかも、このサントリーニで・・・?
スペイン南部の田舎町で、こういうのがあったなと思い出した。人種差別というのは初めてではないが、しかし・・・
いやいや、たまたまおばさまのご機嫌の悪い時に、わたしが来店してしまったのだろう・・・うんうん!・・・って?
・・・はーぁ?!
ま、真相はわかりかねるが、こんなところで大事な時間とエネルギーを消耗するわけにはいかない。おばさまの横顔が、ぷいっとむくれた幼い少女の横顔のようにも見えてきた。
実は、昼間、バスターミナルへ行く途中に、もう一軒、別の食料品店をわたしは見つけていた。Agiou Athanasiou通りをしばらく戻って歩く。道路の左側にある、「セルフサービス」という変わった名前の店だ。
食料品店「セルフサービス」
先ほどの食料品店よりは品数がずっと多い。野菜や果物が店頭に並び、ジュースや牛乳、水、パン、お菓子、お酒、その他いろいろ売っている。朝食用のヨーグルトもここで調達したと思う。
ここはおっちゃん(親しみをこめて”おっちゃん”と呼ばせて頂きます)が切り盛りする店だった。何を話したか忘れてしまったが、覚えたてのギリシャ語をいくつか話してみると、おっちゃんは興味を示した。お、何で話せるんだ?、どこで習った?、で、どっから来たんだ?と会話が始まった。