ゼウス神殿のメトープ
さて、東・西側のペディメント(破風)彫刻を見た後は、展示室の両脇の壁を飾る、レリーフを見てみよう。
レリーフは全部で12枚。ゼウス神殿のメトープを装飾していたもので、ヘラクレスの12の偉業を表わしている。
ゼウスと人間の間に生まれた子:ヘラクレスは、嫉妬したゼウスの妻:ヘラの呪いで正気を失い、妻子を殺めてしまう。罪を清めるため、ヘラクレスはデルフィの神託に従い、エウリュステウス王に会いに行き、王から10の試練を与えられる(10の試練は、後に2つ追加され、12の試練になった)。
下記写真は、レリーフの一つ、ヘラクレスに倒されたネメアのライオン(部分)。
ヘラクレスが身にまとっていたライオンの毛皮は、このネメアのライオンのもの。あらゆる武器を跳ね返す皮を、彼はライオン自身の爪で引き裂いて鎧を作ったそうだ。
青銅などの出土品
豹?ライオン?の頭部。紀元前8~7世紀のもの。
踊る7人の女性(精霊たち?)紀元前8世紀ごろ。
おびただしい数の奉納品(手にのる小ささ)紀元前8~7世紀。
ニンパイオンの彫像など
大富豪イロド・アティコスによって寄贈された、オリンピア遺跡のニンパイオン(給水施設)に設置されていた牝牛の像。
彼の妻レギラにより、ゼウスに捧げられた牝牛像で、体の右側に奉納碑文が彫られている。
ローマ皇帝ハドリアヌスの大理石像
ローマ皇帝の像を見るたび、いつも凝った鎧の装飾に目がいってしまう。
下写真↓ 胸飾りはゴルゴ(ン)の顔だろうか?(髪の毛がヘビで、見た人を石にしてしまうゴルゴ3姉妹。有名なのはペルセウスに退治されたメデューサだ)
こちらの鎧には、向かい合うグリフィンがシンメトリーに描かれている。
ルシウス・ヴェルス(青年像)(後のローマ共同皇帝)
ポッパエア・サビーナ (ローマ皇帝ネロの2番目の妻。西暦1世紀)
ひときわ目を引く美しい像。
ヘルメス像
しびれるほどに美しいヘルメス像。完璧な美。
この彫像のために、一室が設けられている。
思わずため息。
博物館の説明を読んでみよう。
プラクシテレス作のヘルメス像(紀元前340~330年)
この像は、1877 年にヘラ神殿で発掘調査中に発見されました。
神々の使者:ヘルメスは、ゼウスに命じられ、赤ん坊のディオニュソスを乳母の精霊の元へ連れて行く途中、マントを木の幹にかけて休んでいます。右腕を上げているヘルメスの手には、おそらく、未来のワインの神のシンボル、一房のブドウが握られていたのでしょう。 ディオニュソスはそのブドウに手を伸ばしています。
彫刻家は、神の顔の穏やかさ、そして体の調和を表現することで、彫像の美しさを引き出しました。
彫像の高度に磨かれた表面は、プラクシテレスの優雅で柔らかな特徴を、一層高めています。・・・ ・・・ ・・・ ・・・
パロス島産の大理石。 高さ2.13m。
ふくらはぎと左足は石膏で修復されています。オリンピア考古学博物館、展示ボードより、一部引用し、和訳
ヘルメス像の輝きは、2000年以上経った今でも失われずに残ったのだ…と思うと、胸がいっぱいになる。
最後に
感動の余韻に浸りながらも、そろそろ退館しようと出口に向かう。すると、再び、東と西のペディメント彫刻のある大広間に出た。
ああ!
やはり、目はケンタウロスに向いてしまう。なんて生々しいのか! そして、構成のすばらしさ! これらを制作した古代の人々に圧倒されてしまう。
しばらく観賞した後、やっと、この部屋を退室したのだった。閉館して誰もいなくなったら、彼らはひょっとして動き出すかもしれない、そうなる前に帰ろう!なんて、ヒヤッとしてしまう自分を笑う。
下写真↓ 博物館の外壁に並ぶ、ライオンの顔の形をした樋嘴(ひはし)。
冒頭写真:ニンパイオンの牡牛の像