あまりの美しさに…
薄暗くなり、人の気配がなくなった散歩道をUターンする。心細くなったけれど、わたしは、この穏やかで静かな景色を独り占めできる贅沢に、胸がいっぱいになった。
(下写真↓)日が隠れた薄闇の中、空を鮮やかに旋回して飛び回る鳥たち。この崖に巣を作っているのかもしれない。イワツバメのようであり、テサロニキのロトンダでも、夕暮れ時に、この種の鳥を見かけたのを思い出した。
再び、岩のトンネル。
せり出す岩壁。
岩壁を抜けた先の光景。
なんて美しい…
空をキャンバスに、自然が描いた芸術作品。
この美しさを前に、一体、何ができるだろう、この人間に!!
あれれ…?!
さて、崖に沿った急カーブの道を抜けると…
あれ?!
なんと、今から崖の散歩道に向かう人々が、前から歩いてくるではないか! 急に人がいなくなり、あせって散歩道をUターンした、わ・た・し…
早まった?!
そう思うも、引き返す気にはなれなかった。というのも、今日はナフプリオン初日であるし、明日は大事な「ミケーネ遺跡」巡りが控えている。ゆっくり休むためにも、この辺で引き返すのが妥当であった。
(下写真↓)街へ戻る人々。(振り返ると、結構、人が歩いてきました、笑)。
高い岩壁の圧迫感が、夕闇の暗さを一層深くしていたのかもしれない。崖の道を抜け、再び、太陽の残光が反射する、海と山の景色に戻ってくると、わたしはホッとした。
再び、船着き場。
夕暮れの舞台
さて、ブルジ島も近くに見えてきて、そろそろ街だ~!と思っていると…
ん?
ベネチアンの大砲のある砦付近に、人だかりができている。
なんだろう?と近づいてみると、海にせり出した石の上で、なんと、芝居が行われていたのだった。舞台の背景は、もちろん、すばらしい、ナフプリオンの夕焼け空である(冒頭写真をご覧ください)。
(下写真↓)手前の女性は、乳飲み子を抱えた女性役を演じているようだったが、残念ながら、セリフは聞き取れず。
古代ギリシャ劇だったりして?!と、わたしは、ひとり、想像するのみであった(涙)。
ヤシの木の海岸通り
太陽が沈んでもなお、空は美しかった。こんなに広い空を眺めるのは、いつぶりか…。
大砲のある砦の石壁を通り過ぎると、ヤシの木の海岸通りへ出る。
防波堤からの、ヤシの木の海岸通りの眺め。
ヤシの葉が良い感じ。
防波堤からの、大砲の石壁方面の眺め。
防波堤からの、ブルジ島方面の眺め。
再び、防波堤からの、ヤシの木の海岸通りの眺め。ベンチでおしゃべりする人たち。
(上写真のつづき)…遠くの灯が水面に長く伸びる様子に、ゴッホの「ローヌ川の星月夜」を思い出した。あの絵を見た時に、あんなに光が水面に長く伸びるものなのか、といぶかしく思ったが、ここナフプリオンにて、ゴッホは正しかった、と知ったのだった(笑)。
自転車で遊ぶ子たち。
まっすぐ先にブルジ島。
ヤシの木の海岸通りからの防波堤の眺め。絵はがきの世界。
太陽の色が薄まってゆく…。
ヤシの葉とブルジ島。
外灯とブルジ島。
もはや、美しすぎてため息しか出ない。
散策する人々。
海を左手に、ヤシの木の海岸通りをそのまま歩いて行くと、右手に現れる「パラミディの城跡」。夜間にライトアップされる「パラミディの城跡」の写真は、この1枚きり。お気に入りの1枚である。
ヤシの木の海岸通りには、レストランもあるので、景色を楽しみながら食事することができる。しかしながら、レストランの食事は、今から夕食にするには、お腹に重すぎる気がした。
実は、散歩に行く途中、街中のカメラ屋に寄って、デジカメのメモリーカードを買ったついでに「(今日は日曜なので)スーパーは営業していない」という情報を仕入れていた。ただし、ヨーグルトなどの軽いものならば、ペリープテロ(キオスクみたいな売店)で買えるそうだった。
よって、この日は、朝食用にヨーグルトなどを調達し、有り合わせの軽い夜食を食べ、明日の遺跡巡りに備え、就寝した。
感動の独りごと
ああ、それにしても!!
散歩道の景色のあまりの美しさに、魂が揺さぶられっぱなしであった。そして、ヤシの木の海岸通りの美しさ! 風のない、鏡のように静まった水面に映る、刻々と変わりゆく空の色。ホテルのオーナーが「Sooooo beautiful!」と力を込めて言っていたのを思い出す。
全てが絵になる…
かつて、ミコノス、サントリーニで感じた、この上ない感動が、再び、このナフプリオンでよみがえった。それにしても、日本でのナフプリオンの知名度は、なんて低いのか、と感じずにはいられない。散歩道での夕空に、天国への入口かと思ったくらい、それほどの圧倒的「美」であった。
天候にも恵まれ、一番美しい夕暮れに、この散歩道を歩くことができたわたしは、本当に幸せ者である。
おまけ
外灯に照らされる夜桜ならぬ、ブーゲンビリア(笑)。
冒頭写真:夕暮れの舞台、ナフプリオン