◆膨大な展示の中から、個人的に惹かれたものを紹介します。””内は、博物館の説明をざっくり和訳しています。一部、ガラスの反射や暗くて不鮮明な画像があります。ご容赦下さいませ。
考古学博物館の見学 3
ひき続き、古代のさまざまな生活道具の見学をしていこう。
下写真:右 ”渦巻き模様のカップ、ティリンス、紀元前1250年~紀元前1180年” 左 ”牛が描かれたストレーナー付き水差し、ミデア、紀元前1250年~紀元前1200年”
(上写真↑)左:ちょうど、破損した注ぎ口部分に、無数の穴があいているのがわかる。これで濾過(ろか)していたようだ。
下写真:右手前 ”三脚付きグリドル・トレイ、ティリンス、紀元前1250年~紀元前1180 年” 左手前 ”グリドル・トレイ、ミデア、紀元前1250年~紀元前1200年” 左奥 ”渦巻き模様のスタンド、ティリンス、紀元前1350年~紀元前1250年” 中央奥 ”クラテル、ミデア、紀元前1250年~紀元前1200年”
渦巻き模様が印象深い。ギリシャに限らず、世界各地の古代遺跡で、渦巻き模様は使われており、神秘的である。
ミケーネ時代の葬礼
ミケーネ時代の葬礼について、展示ボードの説明を引用します。
葬礼とシンボル
ミケーネ時代のトロス式墳墓や石室墓の典型的な3つの構造:通路 (ドロモス)、入口 (ストミオン)、石室 (サラモス?:thalamos)は、生から死への移行に伴う3部構造の儀式を建築的に表していました。
この世とあの世の境界であるストミオンは、儀式の焦点にあたります。これらは、政治的権力や社会的威信…が結びついているため、個人と共同体意識の構築/再構築において特別な役割を果たしていました。
ミケーネ文明の葬礼図像には、喪の形式化された身振り、音楽、死者の名誉を称える行列などの儀式が描写されています。
葬儀では、人間や動物の小像、鳥、カエル、ライオン、雄牛の描写、スフィンクスやグリフィンなどの神話的描写を含む、共通の象徴言語が採用されていました。
神聖な意味を持つこれらのシンボルは、死者の地位、神性の顕現、あるいは豊穣と再生に関連していました。
ナフプリオン考古学博物館、展示ボードより (一部引用し、ざっくり和訳)
以下、展示内容の詳細です。
下写真:左上奥 ”戦車の場面を描いたアンフォロイド・クラテル、紀元前1300年~紀元前1250年” 右上奥 ”大きな鳥が描かれたクラテル、紀元前1350~紀元前1250年” 下中央 ”鳥の描かれた水差し、紀元前1300年~紀元前1180 年”、いずれも、ナフプリオンのエヴァンゲリストリアの室墓より出土。
”鳥の女神の小像、紀元前1400年~紀元前1050年”
(上写真↑)ざっくりだが、中央上段(2体の座像):左がパレア・エピダウロス、右がベルバティ、下段左奥がティリンス、それ以外の下段7体がナフプリオンのエヴァンゲリストリア、の室墓より出土。
”同上”(上写真の続き)
(上写真↑)上段の3体がティリンス、左手前がナフプリオンのエヴァンゲリストリア、中央手前がアシニ(アスィニ)、右手前がベルバティ、の室墓より出土。
※(自分なりにネットで調べたところ)ベルバティとは、アルゴスの北東(ミケーネのほぼ東)に位置する渓谷で、古くは旧石器時代からの遺跡があるそうだ。ミケーネ時代の石室墓なども見つかっている。
下写真:右上奥 ”竪琴(リラ)奏者を描いたクラテル、ナフプリオンのエヴァンゲリストリアの室墓より出土、紀元前1350年~紀元前1250年” 左中段 ”タコを描いた水差し、ベルバティの室墓より出土、紀元前1350年~紀元前1300年” 右下 ”水差し、ベルバティの室墓より出土、紀元前1360年~紀元前1250年 ”
(上写真↑)リラ奏者のクラテルのうろこ状の模様が、だんだん演奏を聴きにきた観客たちの姿に見えてきた…か…も(笑)!?
ナフプリオンのミケーネ時代の墓地
こちらも、展示ボードの説明を引用します。
ミケーネ時代の墓地、エヴァンゲリストリア、ナフプリオン
パラミディの北東斜面にあるエヴァンゲリストリアの丘で、50以上の墓室がある広大な墓地が調査されました。紀元前16世紀から紀元前13世紀末までの間、この密集した墓地では、埋葬が続けられていました。
墓地の大きさ、長期間の使用、供物の豊かさと多様性から、アクロナフプリア要塞を中心とする現代のナフプリオンの場所に、人口密度が高く、複雑な社会組織を持ち、繁栄していたミケーネ人の集落があったことがわかります。アルゴス湾の入り江に位置していたことから、この集落は交易の中心だったに違いありません。
墓に使われた陶器により、ミケーネ人の埋葬習慣が明らかになっています。アラバスターやstirrup壺などの軟膏(肌に塗布する油を入れるような)容器、飲食の準備……、リュトンやその他の儀式用の容器、ランプ、香炉は、遺体の処置や、飲酒の儀式、会食、献酒、浄化の習慣の遺物です。
ナフプリオン考古学博物館、展示ボードより (一部引用し、ざっくり和訳)
以下、ナフプリオン、エヴァンゲリストリアの出土品の詳細です。
下写真:右上奥 ”紀元前1500年~紀元前1450年の甕(かめ)” 右中段 ”紀元前1450年~紀元前1400年の水差し” 左上奥 ”紀元前1500年~紀元前1450年の水差し” 左中段 ”キュリクス(酒杯)、紀元前1300年から紀元前1250年”
(上写真↑)下手前:今、わたしたちが使っているカップと、なんら変わらぬ形をしたカップたちに親近感がわく。クレタ島イラクリオンの考古学博物館でも同じく、3000年以上昔の、美しい形をしたカップが並び、驚かされたことを思い出した。
下写真:右上 ”パピルスの模様が描かれたクラテル、紀元前1350年~紀元前1300年” 左中段 ” 渦巻き模様の壺、紀元前1400年~紀元前1350年” 右下手前 ”曲線模様の壺、紀元前 1500年~紀元前1450年”
下写真:左上奥3つ ”円錐形のリュトン、紀元前1500年~紀元前1450年” 左はじ手前 ”アスコス(香油や酒を入れる容器)” 中央手前 ”鳥の顔を備えた注ぎ口付きカップ、紀元前1450年~紀元前1400年”
(上写真↑)円錐形のリュトンの一番左:描かれた模様が、なんとなく、クレタ島クノッソス宮殿の壁画「ユリの王子」の花を思わせる。
下写真:左奥 ”2つの器がつながったストレーナー付容器、紀元前1500年~紀元前1450年”
(上写真↑)左奥:(見えにくいが)右側の器の口(てっぺん)に無数の穴があいており、液体を濾過(ろか)できるようになっている。また、器と器をつなぐ管の部分に(横向きの)ユリの花が描かれ、クレタ島とのつながりを感じる。
下写真:手前 ”アラバストロン、紀元前1450年~紀元前1400年”
こちらのセクションでは、臨場感ある展示もされていた。
下写真:右はじの、穴のあいた器は香炉と思われる。
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まさか、ナフプリオン、パラミディの北東斜面に、ミケーネ時代の大規模な墓地があるとは夢にも思わず、本当に驚いた‼ そして、さまざまな副葬品に、当時の文化の高さを改めて思った。
冒頭写真:ミケーネ時代の副葬品の数々、ナフプリオン考古学博物館