◆膨大な展示の中から、個人的に惹かれたものを紹介します。一部の写真にガラスの反射で見えにくい部分があります。ご容赦くださいませ。
さまざまな壺など
まずは、様々な形と模様のついた壺を見てみよう。独特の模様が描かれた、3つの取っ手が付いた壺(後ろ3つ)。手前右寄りは、stirrup jarと呼ばれる壺(上部に取っ手が付いたミケーネ時代の壺の一種)。
手前のティーカップ、紀元前1350~1300年頃のもの。
穴がたくさん開いた香炉。
美しい模様の壺。ミノア文明の影響を受けているそうだ。紀元前1500~1450年のもの。
右はじの壺はヒュドリア(水瓶) 紀元前1150~1100年のもの。
ユーモラスなタコの壺(テラコッタ) 紀元前1200~1100年のもの。
後ろ中央にそびえるタコ(笑)。
(上写真↑) 上から2段目の、右はじの壺絵は、花をモチーフにしているのだろうか。クレタ島、クノッソス宮殿のユリの王子の壁画を思い出させる…。
偶像・オブジェなど
小さな偶像たち(前中央)。しましま模様のコスチューム。紀元前14世紀のもの(冒頭写真もあわせてご覧ください)。
そして、しましま模様の牛。
象牙のライオン像。 紀元前1250~1180年のもの。
テラコッタのヘビたち。紀元前1250~1180年のもの。
擬人化された陶器の偶像たち。紀元前1250~1180年のもの。
フレスコ画
こちらは、フレスコ画の再現図。祭司たちを描いたと思われる。花の模様など、やはり、クレタ島のクノッソス宮殿の壁画を彷彿とさせる。クレタの壁画と同様に、人物が横向きなのは、エジプトの影響なのか…?!
こちらがオリジナル(上の部分)。紀元前1250~1180年のもの。
(下の部分↓)
当時は、色とりどりのフレスコ画で宮殿が装飾されていたのだろうが、あのゴツゴツした大岩と石の土台しか残っていないミケーネの遺跡からは、なかなか想像しがたい。
こちらは、兜(かぶと)を装着した戦士が描かれたフレスコ画。紀元前1250~1190年のもの。
墳墓の石碑
跳躍する牛が描かれた石碑。紀元前17世紀のもの。
円形墳墓Bから出土した石碑(後ろ中央)と壺の数々。紀元前1600~1550年頃のもの。
石碑の拡大(部分)。
装飾品
ユリのモチーフ。(金細工)
黄金のネックレス 紀元前14世紀のもの。
(上写真の拡大↓) こちらも、ユリのモチーフが使われている。
石の装飾品。表面に溝模様が入っている石は、現代のアクセサリー・パーツのお店でもよく見かけるタイプ。左はじのパーツは円錐形で、なかなか個性的。
ネックレスの数々。
(上写真の拡大↓) パーツの表面には溝が彫られ、細かいこだわりを感じる。
生活用具
台所用品。
機織り道具。
渦巻き状の模様が彫られた石。ステアタイト製(鉱物の一種)紡錘(ぼうすい)。
櫛(くし)など女性のアイテム。
青銅製の三脚大釜 紀元前1180~1050年のもの。
線文字B
線文字B(※)の書かれた粘土板が、内容別に区分けされ、展示されている。写真は、宗教に絡む内容らしい。
※線文字Bは、紀元前1550~1200年頃まで、ギリシア本土、およびクレタ島で使われていた文字。
黄金の品々
数ある展示品の中でも、最も目を引く黄金のコーナー。思わず吸い寄せられるも、後ろから歓声を上げながら走ってきた子供たちに、先を越されてしまった(笑)。
円形墳墓Aからの出土品。
有名な、アガメムノンの黄金マスク(レプリカ)。
シュリーマンにより「アガメムノンの…」と名付けられたが、後にこのマスクは、彼の時代よりも古いものと判明。紀元前16世紀のもの。
剣の柄の部分。とても細かい模様が施されている。
ライオンの黄金マスク(奥に見えるのは黄金のカップ)。
まばゆい黄金の装身具。
おそらく、こちらもレプリカであろう。
手前のピアスは、おそらくパピルスの花のデザインと思われる。
独特の模様が入った黄金のネックレス。
黄金のタコ。足は7本だった。
ミケーネ、後世の出土品
アルカイック時代(紀元前6世紀後半~5世紀初頭)の神殿の奉納物。
テラコッタの人形
スフィンクスの置物
模型
1. ミケーネ山頂の宮殿跡の模型。
実際の遺跡見学では、宮殿跡には入れず、反対側からなんとか背伸びして、大広間(中庭)やメガロンの一部を覗ける程度だった。手前に階段があることを、この模型で初めて知った。玉座の間(メインホール)の4本の柱跡と炉床跡も、この模型により確認ができる。
2. ミケーネ遺跡全体の模型
険しい場所に建てられたのがわかる。
上写真のズーム↓ (城壁内)
別アングル。
城壁内の模型(部分)
おまけ
博物館に飾られていた獅子門の絵。 E. Dodwell(※). (1805)
(※グーグル検索したところ、エドワード・ドッドウェル;アイルランドの画家、旅行者、考古学の作家、がヒット。1801年~1806年にかけてギリシャを旅したそうだ。)
見学し終えて
とにかく、遺跡見学をした後の博物館見学は、驚きの連続であった。いろいろとすばらしかったが、何と言ってもインパクトがあったのは、黄金であった。あの岩と石だらけの遺跡から、あんなにも繊細な金細工が出てくるとは(!)、あまりにもギャップがありすぎて、本当に驚いた。紀元前1000年以上前のミケーネ人の底力を見せつけられた気がした。
黄金のマスクについては…見学者が去るのを待ち、やっとカメラに収めるも、後でレプリカと知った。思えば、本物の金にしては、輝きが派手過ぎるし、繊細さに欠けている気がしていた。金は柔らかいから、形や線がもっとデリケートに出るものなのだ。
また、タコの絵の壺や、ユリのモチーフ、フレスコ画の花のモチーフなど、クレタ島で見た出土品の数々を思い出させるものもあり、古(いにしえ)におけるミケーネの、クレタ島との関係を思い浮かべずにはいられなかった。
とにかく、この土地は、お墓がたくさん固まっているので、副葬品がたくさん収蔵されている。しかしながら、これらは、ほんの一部。アテネ国立考古学博物館にて、さらなるミケーネのお宝を発見できるだろう。
冒頭写真:小さな偶像たち、紀元前14世紀。ミケーネ考古学博物館所蔵