イラクリオン到着
高速船でサントリーニからクレタ島、イラクリオンへ到着した。
さあ、ホテルを目指そう!と思うも、まず、どうやって港の外に出ていいのか、わからなかった。どちらへ進めばいいのか、案内板も見当たらない。一人ポツンと置いて行かれては大変と人波に付いていく。出口だ!と思いきや、そこは駐車場だった。
困ったな・・・
家族のお迎えがある人ならこれでいいだろう。キョロキョロしながら、どうにか駐車場のバーをくぐったりして適当に進むうち、道路に出ることができた。
とりあえず、外に出られた、ホッ・・・
気がつくと、地面に影が長く伸び、あたりが夕焼け色に染まっている。日没だ。
たいていの下船客たちは、お迎えの車で港を走り去ったが、アジア系のグループを筆頭に、まだ大荷物を持っている少数の歩き組は、周りにいた。彼らに混ざってしばらく歩く。右手に海(港)側を見ながら歩く、まっすぐで長い長い道に入ると、一定の間隔で柵の所に小さな地図が現れ始める。この地図のおかげで位置を確認することができる。旧市街にあるホテルへの道はこの道で間違っていないようだった。
しばらく行くと左手に、ホテル群の大看板が見えてくる。ガイドブックにも載っているホテルたちで、これが良い道しるべになる。道の左側へ渡り、ホテルを目印に左折して、細い道を適当に歩いていくと、目的のイリニホテルに到着した。
イリニホテルとおじさん 1
うわぁ~・・・!
ホテルの名前を2度、確認した。近代的でピッカピカの真新しいホテルだったからだ。思いもしない展開だった。
ホテルに入ろうとすると、ガラス張りの正面扉の向こう側に、おじさんがこちらを向いて立っているのが見えた。ホテルの泊り客なのか、と思いきや、なんと、おじさんはホテルの入り口から外を見ていて、わたしが来るのを待っていたらしかった。わたしがホテルに入るや否や、あ、お客さんはキミだったのか!という素振りをした。
それにしても、ロビーや受付、その他もろもろ、全てがこのホテルは新しくて美しかった。久々にまばゆいものを見て目を奪われてしまった。
チェックインが済むと、おじさんは間髪入れず、地図をバッと広げ、よく要点の絞り込まれた、無駄のないイラクリオンの町の説明を始めた。こちらが口を挟むスキもなく、最初はあっけにとられたが、よどみないおじさんの説明は感心するものだった。そして最後に、近場の、おじさんおすすめのレストランが3つ、紹介された。
- リゴクラシ、リゴタラサ
- Ippokampos
- ******
**残念ながら、聞き取れて、なおかつ、字が判読できたのはこの2つのみ**
おじさんは、リゴクラシ、リゴタラサを指さして、「旅行客はみんなここに行く・・・」と言った後、彼らはわかっていないんだ、と言うように、フン!と息をもらした。そして「行くならここ、良いレストランだ」と、Ippokampos を指さし、人差し指の先でポンポンポンポンと何度も触れた。
部屋とキーの説明が終わった後、おじさんは「海の見える部屋と見えない部屋、どっちがいい?」と尋ねてきた。「海の見える部屋は、プラス 〇エブロ(ユーロ)だ」と言う。
わたしは、おじさんの申し出に驚いたが、見えない部屋でかまわないよ、と答えた。すると、おじさんは、尋ねる前からわたしの答えがわかっていたのだろう、「ふむ・・・ま、でも今回は、特別に、(プラス料金なしで)海の見える部屋に泊まっていいよ」と言う。
え?
意外な展開に驚くも、おじさんは、続けてこう言った。「このことを、ブッキング・コムのコメントに書いてくれよな?」
え?
「ねぇ、書いてくれよな、なぁ?」
わたしがハッキリと返事をするまで、おじさんの”念押し”は止みそうになかった。わたしは「わ、わかったよ、書くよ、書く!」と、やっとのこと言うと、おじさんは、うなづいた。
いわゆる、おじさんは、(はっきりした)商人(あきんど)タイプだった。
イリニホテルとおじさん 2
ピカピカのカードキーをドアに差し込む。
どんな部屋だろう?
部屋は、シンプルに落ち着いたトーンでまとめられ、やや無機質にも感じたが、さっぱりとこぎれいに整っていた。
ふぅ・・・、脱力。
早速、窓を開けてみる。
おじさんの言う通り、海が見えた。船が並ぶ小さな湾も見える。空には、まだ、太陽が沈んだあとの夕焼けが残っていた。灯がともり始め、それなりに雰囲気が出てきている。
あ・・・
わたしは、おじさんにお礼を言っていないことに気づいた。
部屋の設備は申し分なかった。シャワーはガラス扉を閉めるタイプで、カーテンがまとわりつく心配はない。ただ、石鹸やシャンプーが見当たらないと思い、よく目を凝らすと、洗面所やシャワー室にボトルが備え付けられ、プッシュすると下からリキッドのソープが出てくるようになっていた。
なるほど!
”あの”おじさんらしいな~と思った。不足した分を補充していく方が、無駄がない。たしかに、個々に石鹸やシャンプーを用意してもらっても、特に石鹸は使いきれず、余って捨てることになる。
おじさんは、オートロックシステムは日本製だと言っていた。気がつくと、エアコンも日本製(ギリシャのホテルではほぼ、エアコンはダイキン製、一度東芝製があった)だった。お金をかける所にはかけ、無駄なものは徹底的に省くというおじさんの姿勢と、日々の努力と頑張りが、この新しいホテルのどこを見ても感じるような気がした。
そして、おじさんは、ホテルのエピソードをブッキングコムのコメント欄に書くように、うまいこと、わたしに約束もさせた。もし、これで日本人のお客さんが増えれば、海の見える部屋のプラス料金以上が回収できるだろう。
おじさん・・・
おじさんの頭の中で、そろばんの玉がいそがしくパチパチはじけている様子が目に浮かんできた。
イリニホテル 朝
翌朝は、早々と起床。快晴☀
さぁ、クノッソス宮殿、考古学博物館に行くぞー!!(気合!)
早速、カーテンを開ける。さわやかな朝だ。
ホテル代には朝食も含まれているため、食堂へ降りていく。ホテルの受付は金髪の若い女性に変わっていた。食堂の場所を尋ねると、にこやかに案内してくれる。
食堂には、まだ誰もいなかった。一番乗り!
ヨーグルトは毎朝頂くようにしていたが、今回はハチミツも一緒に頂けて嬉しい。(**朝は小食です。この他にも、もちろん、種類や量は、たくさん用意されていました**)
途中、朝食を用意してくれたスタッフと挨拶を交わす。食後のコーヒーも頂けて満足。そして部屋に戻り、荷物をまとめ、チェックアウトした。大荷物は、ホテルに預かってもらうことにする。身軽になったわたしは、クノッソス宮殿めざし、ホテルを飛び出した!