◆メテオラの地図(日本語は加筆しています)
移動販売車のお兄さん
アギオス・ステファノス修道院前の広場で、わたしはオレンジのシャーベット・アイスを購入した。移動販売車には、ちょっとしたおみやげから、軽食類、お菓子、飲み物などが隙間なく並べられている。それらは狭い空間にギュッと圧縮され、見ていると、今までめぐってきた、メテオラの広大さとは、あまりにもかけ離れていて、クラクラするほどだった。
アイスの会計の際、
わからないことがあれば、何でもききな! オレ、英語は完璧だからさ!
と、声をかけられ、驚いて彼の顔を見返すと、気の良さと何気ないフレンドリーさがあった。一人旅をしている者にとって、それは心に染み入る温かい言葉であり、感動したのは言うまでもないが、しかしながら、西洋人独特の、陽気で自信に満ちあふれた頼れるアニキ風の余裕たっぷりな様子に、わたしは思わず吹き出してしまったのだった(笑)。
ドイツ人夫婦との会話
さあ、アイスを食べながら休憩~!!
と、木陰へ入ると、先ほど道連れになった白人カップルの二人も木陰で休憩しており、自然と彼らとおしゃべりしながら、修道院のシエスタをやり過ごすこととなった。二人はティーンエイジャーと成人の子供がいる、ドイツ人夫婦であった。
驚いたことに、彼らは、ドイツからギリシャまで「バイクで」走ってやって来たのだった。(後で気づいたが、アギア・トリアダ修道院の手前で、わたしを追い抜いて行った2台のバイクは、この二人だったのだ)。
奥様いわく「同じ姿勢で、炎天下でしょ?!もう、下着まで汗でぐっしょりよ~!」とのことだった(笑)。
なんて「タフ」なのか!!
もう、本当に心の底から驚いた。この強烈な日差しを”直接”浴びながら、このギリシャをかけぬけてきたなんて!!
そして、お互いの旅の話が一段落した頃、奥様より「なぜ、日本人はいつもグループで観光に来て、すぐいなくなるの?」と質問された。
おそらく、外国人が不思議に思う日本人のナゾの行動、トップ10に入る類の質問だろう。何とか適当に理由を述べたものの、もっと言いたいことは喉の奥に詰まっていて、自分の英語力のなさが本当にもどかしかった。
それから、話題は今後の旅の予定となった。二人は、メテオラの後、デルフィ(デルフォイ)を観光し、パトラ(ペロポネソス半島)からフェリーでイタリアへ渡り、そのままドイツへ向かう、とのことだった。
また、彼らは、これまでヨーロッパ周辺国の観光は度々してきたが、アジアはまだ行ったことがない、とのことだった。日本からギリシャへの飛行時間をきかれたので、答えると、それを聞いて「とても無理~!」とのことだった。
二人から、今まで行ったことのある国のことを尋ねられ、わたしが「イタリア、スペイン」と答えると、「フランスはすごく良かったよ」「ネクスト、フランス! おススメだよ~!」と笑った。
(フランスか~!)
彼らにフランスを推薦された時、思い出したことがあった。
自国愛の強いスペイン人にとっても、フランスは別格の存在であること、ギリシャ女優のメリナ・メルクーリも「フランスだけは特別」と自著で述べていたこと、そして「エーゲ海幻想」の著者:大内氏は「アテネでは日本の良さ、パリでは日本の悪さを思い出す」と述べていたこと…。
(ん~、フランスか~!)
一瞬、まだ見ぬフランスへ、胸のハートが羽を生やして飛んでいったような気がした。
冒頭写真:メテオラ アギオス・ステファノス修道院