イポトン通り
考古学博物館を出ると、見学に集中していた頭が、一気に解放された。
ぷはーっ(笑)!
空は曇っているが、雨は上がっている。
良かった!
次は、騎士団長の宮殿だ。
ガイドブックにも出ているイポトン通り。
この道を急いで通り過ぎてしまうのは、もったいない。
古い石壁に映える緑
びっしり敷き詰められた玉石
どこへ通じているのだろう・・・狭い脇道
この道は、ゆるい坂道になっている。まっすぐ登りきると、宮殿は右にある。
まだ、雨で湿っているせいか、玉石の表面は、運動靴でもすべりやすい。もともと丸い石なのだろうが、人々の往来で、ますます玉石の表面は磨かれて、すべりやすくなったのだろう。
騎士団長の宮殿
入り口に入る前から・・・
ドーン!
と、すごい迫力!! とにかく、大きくて、りっぱで圧倒されてしまった。
古めかしい城を想像していたが、あまりにきれいすぎて意外な感じがした。修復されているのだろう、時代を感じることができず、思わず夢の国のシンボルである、あのお城を連想してしまった。
しかし、建立された当時は、もちろん、真新しかったわけだから、当時はこんな感じだったんだな、と思うことにした。
それにしても、この迫力と重厚感は・・・
すごい!!
痛恨のミス!
宮殿の中に入ると、大きな中庭が広がっている。その中庭を突っ切って、建物に入ると中は博物館になっていた。
遺跡の、おびただしい出土品が展示されているのを見て・・・
ん~、博物館見学は、一日一回が限度だな~
と、頭が重くなるのを感じた。
実は、考古学博物館でかなりの集中力を使い、わたしは疲労していた。
それでも、何とか、展示物の見学を終わらせて・・・
ふー、終わったぁー!
と、宮殿の出口をスッと出てしまった。数秒後・・・
ガアアーンンンンン!
と、稲妻のような衝撃が頭の中を走った。
わぁー、なにやってんの、わたし?! 2階があったよね?!
気づいた時には、遅かった。
なんと、騎士団長の宮殿の、一番の見どころを見ずに、わたしは宮殿から退場してしまったのだ。確かに、2階へと上がる、幅の広いりっぱな階段があった。それなのに~(泣)。
引きかえして、何とか再入場できないか交渉してみよう、と思ったが・・・
なんと! 体が動かない~
あの階段を見過ごすなんて、どうかしている!!と思ったが、それくらい頭が酸欠でヘロヘロ、戻る気力も体力も残っていなかったのだ。
むむむ・・・何とも残念だったが、素直に体の声に従うのがベストだった。体あっての旅だからだ。
ま、こんなこともあるさ!
シミ島へのチケット入手
騎士団長の宮殿を出た後、気をとりなおし、人の流れに沿って歩いていくと、繁華街に出た。レストラン、みやげ屋など、観光客相手の店がずらっと並んでいる。
頭の疲れがとれてきたわたしは、活気のある町の様子を眺めつつ、リラックスして散歩を楽しんでいた。すると、なんと、「コス島/シミ島クルーズ」の看板が目に飛び込んできた。
ロードス島滞在中に、日帰りでいずれかの島へ行きたいと考えていたので、ちょうど良いタイミングだった!!
若い店員さんが感じよく接客してくれた。翌日のチケットを依頼すると、彼女はシミ島へのチケットを用意し始めた。わたしは、どちらも魅力的な島であることは知っていたが、どちらかと言うと、遺跡に興味があったので、コス島に行きたい気持ちが強かった。そこで、コス島のチケット手配ができるか尋ねてみると、コス島は所要時間が長く、観光する時間が少なくなってしまうので、シミ島行きがお勧めである、とのことだった。
なるほど!
わたしは納得した。そして、明日の行き先がシミ島になったのは、何となく運命だった気もした。シミ島は、とあるブログで偶然知った島であり・・・
こんなすてきな島があるんだ! 行けたらいいな・・・
と、心から思ったものだった。それが、現実となったのだ。
さらに、ラッキーなことに、明日は日曜だから割引があると言う。停泊するのは島の2か所で、昼食は含まず、全て自由行動。オプショナルツアーはない。それで17€だった。
そして、彼女は地図を広げ、乗船場所(港)とそこまでにかかるタクシー料金、歩いた場合の所要時間、船の名前、出発時間を教えてくれた。わたしは、すかさずメモし、船の名前を復唱して、発音をカタカナで地図に書き込んだ。
30分前には港にいるように、と言われたが、果たして、自分が乗船する船を港に停泊している船の中から見つけることができるのか、疑問に思った。尋ねてみると、彼女は笑ってこう言った。
「大丈夫よ、他に船はないから!」
彼女の明快すぎる答えに、わたしも一緒になって笑ってしまった。
スムーズな流れで、親切な彼女からチケットを買えたことで、明日のシミ島行きがすばらしいものになる予感がした。
迷子
明日のシミ島行きが決まったことで、ワクワクしていた。近くにモスクや時計塔などもあり、頂上へ登ってみたい気もしたが、雰囲気だけ味わうにとどまった。噴水の広場まで散歩し、満足したわたしは、いったん、新市街へ戻ることにした。
実は、朝一番でこの町のインターネットカフェのことをインフォメーションで教えてもらっていたのだ。携帯なしの旅なので、何としても探す必要があった。ホテルの主人ニコスにも聞いてみたが、所在地がはっきりしない。タクシーのりば近くのインフォメーションでは「わからない」と言われたが、考古学博物館近くのインフォメーションで、新市街のホテル内にネットカフェがあることを教えてもらっていた。
しかし、その繁華街から新市街へ戻るのが大変だった。
ガイドブックの地図を見ていたつもりだったが、繁華街を通り抜け、人通りの少ない脇道を探検気分でずんずん歩いて行った結果、道に迷ってしまった。
ギリシャの島ではなく、どこか、古いヨーロッパの町を歩いているようだった。昔の長いスカートをはいた中世の女性が歩いていても、全く違和感がない。ひっそりとして、薄暗く、どこか湿った感じも、一層、雰囲気を盛り立てていた。
どの道も同じ道に見え、通りの名前もさっぱりわからない。新市街とすぐ隣り合わせであるのに、時間の流れ方が違うのだ。空気も違う。本当に驚きだ。
時間があれば、旧市街で、あえて迷うことを楽しむ観光も、面白いだろう。脇道から出ると突如、通りの雰囲気が変わり、ステキな工房が現れたりするのだ。
旧市街で出会ったおばあちゃん
さて、どっちに行ったものか?
立ち止まっていると、「こっちよ!」と親切な女性が教えてくれた。
歩くうちに、ときどき雨がぱらついてくる。
すると、前から歩いてきたおばあちゃんが、突然、何やら話しかけてきた。一生懸命、耳を傾けてみると、「傘をさしたいのだが、傘が開かない」と言っているようだった。
わたしは話しかけられて少々驚いたが、彼女に親しみを感じた。尋ねた相手が外国人かどうかなど、彼女はこだわらないのだ。
傘を見てみると、ワンタッチで開く、折りたたみ傘だった。家族からのプレゼントかもしれない。
ほら、ここを押せば、開きますよ!
と、身振りをまじえて話しかけるも、彼女はあらぬ方向を向いたままだった。そこで、開いた傘を手渡すと、嬉しそうに笑って去って行った。
別れた後、
そういえば、あの傘、おばあちゃん閉じれるかな?
と、心配になったが、彼女の隣で、誰かが代わりに傘を閉じている様子が目に浮かんできた。
きっと、大丈夫だね!!
新市街へ
ステキな中世の小道を迷っていたが、いく人もの方々のおかげで、なんとか考古学博物館の広場へたどりつくことができた。
戻ってきたぞー!(笑)
博物館の前には人だかりができ、オペラ歌手のような美声の男性が、皆を楽しませていた。
わたしは、城門をくぐり、新市街へ抜け、明日のシミ島行きに備え、タクシーのりばを再確認した。その後、今後の旅の準備(航空チケットやホテルの予約)をするべく、ネットカフェへと向かった。
シミ島行きのチケットは、シーズンによっては、取りにくい場合があるかもしれません。(この日記は5月下旬にさしかかる頃の話です)シミ島の詳細はこちらです。