※韓国人女性Kさん・・・メテオラへ長距離バスで向かう途中、経由地:トリカラで出会った娘さん。お母様と旅をしている。カランバカでホテルが一緒だった。
◆メテオラの地図(日本語は加筆しています)
Kさんとのおしゃべり
かなり余裕をもって、バス停に来ていたので、メガロ・メテオロン行きバスが来るまでには、まだまだ時間があった。わたしは、Kさんとたわいのない話を続けた。Kさんの母国語の簡単な挨拶言葉から、韓国ドラマまで話は及んだ。
それから、わたしはKさんに「どうやって英語を身につけたの?」と尋ねてみた。するとKさんは「カナダに留学したんだー」と顔を輝かせた。そして「実はね、その時のルームメイトが日本人だったんだよー!」と楽しそうに言うと、彼女は、なんと、片言の日本語を話しだした。まさか、Kさんの日本語が聞けるとは!
Kさん、すごいね!(ハッハッハッハ!)
思わぬ展開に、わたしは笑い、そして思った。
(だから、彼女は、わたしが日本人であることがわかったのかー!)
そんな小さな謎が解けたところで(笑)、今度は、Kさんから質問を受けた。
メテオラに来る前は、どこにいたの?
わたしは、それまでの経緯をざっと説明し、メテオラの後はさらに南下して、最後にアテネに戻る予定である、と告げた。Kさんは(ロードス島から日帰りで行ける)シミ島のことを知らなかった。わたしは、色彩あふれるシミ島のすばらしさを、ぜひ、彼女に知ってほしいと、ガイドブックを取り出した。すると…
うわぁー!
Kさんが叫んだので、何かと思いきや、「よく使い込んでるね~!ハハハハハ!」と、彼女は笑い出した。見ると、インデックスと付箋(ふせん)だらけの、よれたガイドブックがわたしの手の中にあった。恥ずかしながら、Kさんに指摘されるまで、まったく気がつかなかったわたしであった。
そして、肝心のシミ島だが…ガイドブックの写真を見せるも、反応はイマイチだった。写真は小さく、あまりインパクトのないものだったし、かと言って、自分の古いデジカメの写真を見せるには、膨大な数の写真をさかのぼらなくてはならず、それには数千回ボタンを押し続けなくてはならなかった。よって、色とりどりの、陽光あふれる美しい島の情景は、残念ながら、わたしの胸の内にとどめておくほかなく、なんとも歯がゆい思いをした。
そして、今度は反対に、Kさんにメテオラに来る前のことを尋ねてみた。すると、彼女たちはトルコから来たという。「カッパドキアでバルーン(気球)に乗ったんだー!」と、はしゃぐKさんに…
わぁー、すごーい!
わたしも、まるで自分のことのように、楽しい気分になった。カッパドキアの気球のことは、TVなどで見て知っていた。大空に、色とりどりの気球が浮かぶ様子は、本当に圧巻だ。その、大空に浮かぶ気球の一つに、Kさんたちは乗ったのかー! きっと気球からは、地平線が見えたにちがいない!と思った。
そして、メテオラ観光の後、Kさんたちは再びトルコに戻ると言っていた。なんと、Kさんたちは、バスでトルコに戻るのだという。一瞬、ピンとこなかったが、バスで10時間かかるという。わたしは驚いて、口を開きかけたが、わたしよりも早く、Kさんが「40ユーロしなかったんだよ、ベリー・チープ!ベリー・チープ!(激安だよ!激安!)」と叫び出した。
今思えば、わたしも彼女と一緒に共感して、盛り上がれば良かったと思うのだが、彼女ほど若くもなかったわたしは、むしろ「10時間」のほうに驚いた。安さよりも、体の負担を考えてしまう。Kさんと一緒に旅をされているお母様のこともチラッと頭によぎったが…、しかしながら、これは、わたしの勝手な取越苦労の類だろうと思った。何を選び、どう行動するかは、こういった個人旅では、まったくの自由だからだ。それよりも、どんな道を選ぼうと、その時の自分だけにしか味わえない貴重な体験を、精一杯、楽しむだけである。
メガロ・メテオロンへ
そうこうするうちに、バスがやってきた。バスは隣村のカストラキを経由し、メガロ・メテオロン修道院を目指し走る。車窓から見上げると、奇岩と岩にへばりつくアギオス・ニコラオス修道院が見えた。
ほどなくして終点でバスを降りると、まずは修道院よりも、メテオラの絶景の方に目を奪われた。
うわぁー!
バスを降りた大半の人たちが、崖っぷちへ歩み寄り、ここで歓声を上げ、写真を撮る。わたしもその中の一人だった。
冒頭写真:バス終点で絶景を写真に撮る人々(奥に見えるのはメガロ・メテオロン)